藤居芳生34へ

見ろよ、このバトン、ちゃんとわたしに来たよ。

このバトンをさ、君にわたせられないとは、正直いっぺんも思ったことは無かったけど、藤居芳生32はこの瞬間に、おいらがどんな顔をしてバトンを君に渡すのか、興味というか不安があったようだぜ。
なんだろ、この状態はある意味想定の範囲外だよ、こんなに元気な状態でこの瞬間を迎えるなんて、全く予想していなかった。あの頃の藤居芳生32は、ああ見えて結構悲観的だったから、てっきり目の下にくまでも作ってぼろぼろになっているおいらの姿を想像していたんだよな。想像していたのとはぜんぜん違う、おいらは普通に元気だろ?

確かにバトンを渡されたおいらは、当分メソメソしていたさ。治療前の不安と、職場での「死刑宣告」と、一人になると悔しいやらもどかしいやらですぐに泣いていたさ。ちょっとバカだったね。
年をまたいで、いろんな旅をはじめたよな。日記、自転車、坊主、ダイエット、そして治療。驚いたことに、まぁ何とか飽きずに続いているよ、ちょっと厳しい局面もあったけどね。
でも、日記を書くことでお仲間が結構たくさんいることがわかってきて、勇気をもらいながら一つずつハードルを越えていくと、どんどん不安が取り除かれて元気になっていったんだ。このとき、自転車というリトマス試験紙が、おいらの体がそれほどぼろぼろでないことを気づかせてくれたよ。ダイエットは、治療のネガティブな面をポジティブに捉えるため、自分をだますために非常に役に立ったね。
もし、あの時何もはじめられなくて、ただ治療だけの日々を送っていたら、ひょっとしてドクターストップされる前に勝手に治療を中止していたかもしれない。だから、治療と同時にいろんなことを始めるってのは、ちょっとおいらの作戦勝ちだな、なんて自己満足しているんだよ。

な、お前はおいらより随分恵まれた環境をすごすことになるはずだよ。だって、これ以上からだの調子が悪くなるわけは無い、日々改善していく感覚を持ちながら生活ができるはずだ。ちょっとうらやましいが、実はある意味それほど悔しくない、それって結構退屈かもしれないしな。
とにかく、おいらはおいらなりに全力疾走したよ。お前にとっては実にトロトロした感じかもしれないけど、何とか助走にはなっているだろう。

さ、このバトンを受け取って!このバトンは藤居芳生33それ自身だ。何かくじけそうになったとき、このバトンを見るといい、きっとお前の助けになるから。
藤居芳生34よ、頑張れ!