竹内さんと林さんと瀬戸

乱気流に入ってずいぶん揺れる飛行機。
ちょっと緊張したのか、毎日の飲酒でなんとなくお腹が痛くなり、気をそらすためあわててさっき収めたヘッドフォンを耳にかける。

機内放送では、竹内まりやさんの特集。ご本人が曲紹介などを。
目の前の小さい液晶もモニタは、前方の景色。濃い雲が迫ってくるシーンが繰り返される。先輩と意見が一致「ゲーム画面のようですね。」
パッと雲が晴れ、前方に山間の村が。BGMは竹内さん本人が歌う「みんなひとり」。なんとなく、いい感じである。

そのうち左の窓から、見たことのある景色が。非常に対岸が接近した瀬戸。左方に島とつながる橋。右方に島々をつなげるつり橋。
尾道
もちろん、この位置からこの景色を見るのは初めてだと思うが、千光寺から何度もみたこの瀬戸は、頭の中に箱庭を作っていたようだ。
「海が見えた。海が見える。五年振りに見る尾道の海はなつかしい。 ◇赤い千光寺の塔が見える。山は爽やかな若葉だ。 緑色の海の向こうにドックの赤い船が帆柱を空に突きさしている。 私は涙があふれていた。」
この前、福山西SAの碑で見た、林芙美子の一節を思い出す。

すぐに左に遠心力が感じられ、広島空港に向け、山を越えるコースへ。
「けんかをやめて、二人を止めて、私のために争わないで、もうこれ以上。」
今思うと、ものすごくナルシストな唄である。