昔の自分が教えてくれる

今日は残った仕事をさっさと終え、明日職場を移動するための身辺整理を行った。希望した異動ではないので、とにかく気が進まない。
とにかく自分の気持ちがぐずぐずして作業も進まない。頭のスイッチを切り替える。結果、職種も変わる事もあり、これまで8年ちょっと分の書類を全部処分して、形だけでも未練を断ち切ることにした。
妙なボードが出てきた。無意識に声を上げている。今の職場に来て、初めて取り組んだ仕事。製品展示会に、できても無い製品デモを実行するため、手作りで作ったボードである。見た目はグロテスクだが、恐ろしく細かい仕事で、そしてしっかり動作して来場者を大いにだますことができた。夏休み休暇を割いて半田付けして作った。捨てようと思ったが捨てられない。あまりの気迫の仕事に、涙する。今の自分にはできない。
5年前の手書きの資料が出てくる。技術勉強会のテキストとして作った資料。イラストを交えながら、要点を説明していく。課内の技術向上に役に立ったか今となっては検証するすべも無いが、手の甲を真っ黒にして書いたシャーペンの書には、力がこもっている。捨てられず、先輩に処理を頼む。できないといわれる。泣けてくる。
7年前の回路図が出てきた。マーカーペンですべてのネットが、ネットリストを元にチェックされている。この時期、CADの操作ミスのため、接続されていないネットのため不具合が続出した。社内ルールは無かったが、このボードをミスせず設計させるため、すべてのネットを人力照合していた痕跡だ。執念が見える。しかし、なぜこんなものをとっておいたのか、昔の自分をのろった。捨てられない。
昔の仕事がおいらに語りかける、「おまえ、最近サボってたんじゃないのか?」と。
病気のことが無くてもこの仕事からはずされたということはわかっていたが、納得してなかった。だが今、昔の仕事が教えてくれた、「お前がサボってたのを、上がちゃんと見てたんだよ」と。

その他すべてをすべてごみにし、机をてかてかに磨き、掃除機をかけ終わったのが午前一時半。下駄箱の記名札もはずしておいた。もうすぐ、おいらがいた痕跡も消える。